合掌
私たちは年齢を重ねるごとに身につけていく能力と同時に徐々に失っていく能力もあります。特に、科学の進歩は私たちを取り巻く社会環境を大きく変化させ、私たちの生活環境も著しく変化します。いろんなことが機械化されて、私たちが身につけた能力を発揮する場が徐々に減っていくことで能力そのものが退化していくきっかけにもなります。顕著なのが、パソコン等電子機器の出現によって漢字が書けなくなったと感じられる方がこのところ一段と増えているのではないでしょうか。先日、経済協力開発機構(OECD)が2015年の学習到達度調査(PISA)結果を発表しました。この調査は、3年ごとに無作為抽出の15歳を対象に「読解力」「科学的応用力」「数学的応用力」の3分野で行われるというもので、今回は72ヶ国・地域が参加したということです。それによると、日本の「読解力」は前回4位から8位に後退したということでした。ちなみに、「科学的応用力」は4位から2位へ、「数学的応用力」は7位から5位へ上昇したということです。PISAと日本の教育政策には因縁があり、2003年の調査で「読解力」が14位と急落したことを受けて「ゆとり教育」が大転換されるきっかけを作ったということです。今回の結果を受けて文部科学省は「脱ゆとり」教育の成果と共に、「読解力」の低下はまとまった長文を読み解き、自分の言葉で表現する力や語彙力不足と分析し、SNSなどによるコミュニケーション環境の変化も一因としています。頻繁な短文のやり取りやインターネットに情報収集を頼るあまり、文章を書くことや考えを表現すること、読んで理解する機会が極端になくなっていることなどが指摘されています。少林寺拳法の修練の過程でこのところよく耳にするのが昇格考試における学科問題の出題方法に対する意見です。現行の“空欄の穴埋め解答式”ではなく、全問“記述式”に変えるべきではという考え方です。解答を丸暗記して書くことで「読解力」を高めることができるのではないかということです。人と人とのコミュニケーションはまずお互いが理解しあうことです。お互いが意図するところを正確に理解したうえでお互いの考えを示すことがそこに良い関係を生み出します。人に何かを伝えることは本当に難しい作業です。日頃の修練の場においても常に感じさせられていることではないでしょうか。自分の意思を正確に伝えること、相手の意思を正確に受け止め理解することが常に求められています。
去る12月3日、2016年県連懇親会が開催されました。ホームページにもアップされていますが、今年度末をもって第一線を退かれる4名の道院長の皆さんをお招きして長年にわたるご指導に対して参加者一同感謝申し上げる機会を設けさせていただきました。50年以上の長きにわたる道院長としてのご苦労や功績にはとても報いきれることはできませんが、「今日は良い機会を設けていただいた。」とおっしゃっていただくことができました。今後に対しての貴重なご意見もいただきました。開祖の「志」を愛知県に根付かされた大先輩たちの後姿をしっかりと追い続けていかなければとの思いをあらためて強くしました。
愛知県教区サイト https://shorinji-aichi.jp/wp/kyouku
愛知県連盟サイト https://shorinji-aichi.jp/wp/kenren
再拝
2016 年 12月 10日