合掌
今年のノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーのオスロ市庁舎であり、核兵器の開発や使用などを法的に禁じる「核兵器禁止条約」の国連での採択に貢献したことが評価された国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)にメダルと証書が贈られ、ICANのベアトリス・フィン事務局長と広島での被爆体験を証言してきたカナダ在住のサーロー節子さんが改めて各国に核廃絶への協力を呼びかけました。北朝鮮の核開発問題がICBMの発射実験によってより現実味を帯びて深刻化する中でトランプ米大統領の発言、それに歩調を合わせる安倍首相の発言、そして何の議論も行われずに検討に入ったとされる航空自衛隊の戦闘機に搭載する射程数百キロの巡航ミサイル導入計画等々、核兵器禁止条約にも署名・批准しない立場をとり、「核兵器国と非核兵器国の間の信頼関係を再構築し、核兵器国もしっかり巻き込む形で現実的で実践的な核軍縮の取り組みを粘り強く進めていきたい」とする世界で“唯一の戦争被爆国”である我が国の『核廃絶』に向けたスタンスについては浅学菲才の私にはとても理解のできない部分ではあります。当然のことですが、「良いことは良い、悪いことは悪い」と単純に言い切れない外交の難しさ、戦略的な部分が全てを曖昧な形にせざるを得ないのでしょうか。
さて、“少林寺拳法創始70周年”を迎えた2017年も残すところ1ヶ月足らずとなりました。今年一年を振り返ってみますと、県内では3月末をもって藤田昌三先生(熱田道院)をはじめ森健太郎先生(江南道院)、佐々木繁士先生(尾張瀬戸道院)、加茂雅久先生(尾張守山道院)が道院長を交代されて後進に道を託されました。加えて5月には名法道院・高橋法昇先生(初代愛知県連盟理事長)、10月には豊橋道院・徳嶋繁先生(二代目愛知県連盟理事長)のお二人が急逝されました。特に、徳嶋先生はご自身が監督を務められていた愛知大学少林寺拳法部の周年行事の最中に倒れられ、そのまま帰らぬ人となられました。この地方に少林寺拳法の種をまかれ、先頭に立って各地への普及に奔走された先生方の大いなる決断、そして生涯を閉じられたお二人の先生方に対しては「本当にお疲れ様でした」以外に言葉が見つかりません。2017年は愛知県少林寺拳法連盟にとっても大きな節目の年になりました。言われはじめて久しい指導者の高齢化、拳士数の減少化傾向に歯止めがかからない現状は当然のことながら廃院を決意されるきっかけの一つとなることもあり、後継者を育て円滑に道院長交代するのではなく、廃院を決意し手続き準備をされている道院長も実際には複数名いらっしゃいます。その中には、毎回毎回誰も来ない修練場所で一人作務を行いひたすら基本演練を繰返す日々もあったとか。そんな日々に自ら終止符を打とうと決心された道院長もいらっしゃるということですから、その心情は察するに余りあるものです。振り返ってみると、組織機構改革を経て普及・布教の現場を取り巻く環境は一変しました。コンプライアンスの観点から一定の条件を満たさなければ道院が公共施設を使えないことは理屈ではわかっていてもなかなか納得できないのが道院長の偽らざる心情でした。費用も含めていろんな説明をしなければならない入門時のハードルの高さは道院長のモチベーションを著しく下げてしまいました。しかし、入門しないまでも見学者が来る、体験希望者が来るということだけでもこの取り組みへの情熱を保ってくれたものです。しかし、それもなくなり兆しさえ見えなくなった時にどこまで気持ちを繋ぎとめることができるか・・・導き出された選択肢が“廃院”だったということです。私たちは常に現状を見据えて分析、対応を考えていかなければなりません。例えば、圧倒的に露出度が減った私たちの活動を少しでもPRするためにと“ポータルサイト”(以下にアドレスを表示)を構築しました。普及・布教活動現場の“見える化”によって「点」の取組みを「面」で対応しようとの試みです。地域性があるかもしれませんが確実に効果が表れてきた道院もあるので方向性は間違っていないと確信しています。手法はいろいろあるでしょうが、“少林寺拳法の本質を広く知ってもらう”取組みがもっともっと必要だと感じています。また、それに付随して公共施設の使用頻度を高めることに関しては、“少子高齢化”という社会環境の変化があるにせよスポーツ少年団の立上げを促進することで対応しようとしています。後継者育成に関してもつながる取り組みだと考えています。見方を変えると、高齢化が進む道院長交代は非常に難しいという現実があるということです。
私たちの取組みは一過性のものではありません。“少林寺拳法とは何か?”何を目的にしているのか・・・何を目指しているのかを明確にして取り組んでいかなければなりません。社会は今、「自分さえよければ良い」とする内向きの世界に向かっています。そんな中で「半ばは他人のことを考える」という社会を目指します。
「2019年少林寺拳法全国大会」は2019年11月23・24日にスカイホール豊田(豊田市総合体育館)にて開催することが決定しています。1984年の愛知県体育館、2004年のナゴヤドームに続いて愛知県連盟にとっては3回目の全国大会開催となります。少林寺拳法を広く知っていただく機会にすることはもちろん、創始70年を経てあらためて開祖の“志”を繋ぐ意味を実感できるような機会にしたいと考えています。県内が一丸となっての取り組みを目指します。
今年一年間、県連・県教区運営にご協力いただいた全ての方々に感謝申し上げます。
再拝
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2017 年 12月 10日
愛知県連盟理事長 多月 文博