合掌
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、安倍首相が全国の小中高校に3月2日から春休みまでの臨時休校を要請したことで、全国的に大きな波紋が広がっています。首相は「政治決断」という単語を盛んに使って独断に近いとされる今回の休校要請の必要性・正当性をアピールしていますが、有識者を含めた政府内の検討内容はじめ要請決断に至った経緯も根拠も示されない状況に、国内には一層の混乱と不安が拡がっています。感染拡大を防止するためにこの1~2週間の対応がキーポイントとされていますが、丸投げされた地方自治体の試行錯誤が続きます。姿が見えないウイルスとの闘い、効果が期待できない不安も持ちながらの対策、とは言え生活を維持していくための現実問題とも向き合わなければならない対応に否応なしにさらされています。
さて、危機的な状況を想定するときによく使われる二つのキーワードがあります。「危機管理」と「リスク管理」です。この二つは似た響きがあり、同じような文脈で用いられることが多いため、混同されることも多くて間違いやすいのですが、実際のところ、リスク管理と危機管理では管理する対象が異なります。「危機管理」とは、「すでに起こってしまったトラブルに関して、事態がそれ以上悪化しないように状況を管理すること」。マイナスの局面から脱出し、一刻も早く平時の状況へと戻すために危機管理が求められるのです。これに対して「リスク管理」(リスクマネジメント)とは、「これから起こる可能性のある危機・危険に備えておくための活動」と定義されています。“備えあれば憂いなし”という言葉があるように昨今の自然災害にあらかじめリスクを想定して備えることはこれまでの大規模災害被災時の教訓からみても非常に重要な対応です。もちろん、将来起こりうるあらゆるリスクに万全を期すことは不可能ですが、発生の可能性や実際に発生した場合のインパクトなどを総合的に評価した上で、優先順位をつけて「リスク管理」に取り組む必要があります。危機的な状況に瀕した時の「危機管理」を迅速かつ効率的に進めるためにも「リスク管理」の精度が問題となります。今回の新型コロナウイルスの感染拡大に対してこの二つの“管理”はどうだったのでしょうか?政府の対応が「後手、後手に回っている」と指摘されていますが、周到な「リスク管理」も適切な「危機管理」も機能しなかったのであればこの指摘も致し方ないように思います。
振り返って我が組織の対応、県連の対応についても様々なご意見や問い合わせが寄せられています。特に、昇格考試については準備を重ねてきた拳士の気持ちを考えると、運営側としては予定通り開催したいとする方向性を持っていましたが、開催行事全般の扱いについて優先順位や波及するであろう問題、感染リスクを考慮して開催の可否をギリギリまで検討し判断してきました。結果的に3月末までに予定していた行事は現時点で全て中止にしていますが、この判断で良かったのかどうか、また、皆さんに通知するタイミングの是非についても意見が分かれたところです。国の方針やそれを受けての自治体判断、そして施設管理者の対応と拳士・保護者の判断等々、個人的な考えを優先することがためらわれます。あらためて“二つの管理”の大切さを痛感します。
そもそも国の専門家会議が感染拡大防止に向けて「ここ1~2週間が瀬戸際」としたのが2月24日。ここを起点に考えると2週間目は3月9日。もちろん感染の拡大状況がどうなっているかの判断が最優先ですが、どのタイミングで対応を変えていくかも大きな判断となってきます。県連では所属長から寄せられた意見をもとに各所属の対応状況(活動休止状況と再開に向けた意向)を緊急調査しています。活動再開に向けての判断材料をまとめて皆さんに提供するためです。安倍首相が全国の小中高校に春休みまでの臨時休校を要請したことで感染の拡大状況がどう変化していくのかをもちろん参考にしていかなければなりませんが、しっかりと予防措置を講じることで活動再開に向けて踏み出せるのであれば対応策を探っていくべきではないかと考えています。引き続き、ご理解・ご協力をお願いします。
再拝
2020年3月5日
愛知県連盟理事長 多月 文博
※少林寺拳法“グループ愛知”ポータルサイト構築計画に伴い以下のサイトが立上っています。
(愛知県連盟サイト:http://shorinji-aichi.jp/wp/kenrenにて紹介)
■11支部サイト掲載(スポーツ少年団・大学・実業団)
(愛知県教区サイト:http://shorinji-aichi.jp/wp/kyoukuにて紹介)
■59道院サイト掲載